バリュー投資の父として広く認められているベンジャミン・グレアムは、市場は、短期的視点に立った場合には、有価証券の価格を示す投票機のようで、有価証券の価格はその日の人気を反映すると考えていました。しかしながら、長期的視点に立った場合、市場は計量器のようで、有価証券の価格が発行会社の本質的価値又は発行会社の真の価値と合致していくと考えていました。
バリュー投資家にとって、これは、有価証券の価格とその本質的価値が、短期においては乖離するということを意味します。おおざっぱでのんきな楽観主義と圧倒的な恐怖と不安とが一夜にして入れ替わる、市場全体のもつ躁鬱気質により、有価証券の価格はそれ自身が表す発行会社の真の価値よりも頻繁に変動する傾向があります。
この不合理性は、有価証券の価格の上昇となって表れ、有価証券の価格を危険な高さまで押し上げる力となります。下降傾向になって表れると、極端に安値のレベルまで有価証券の価格を引き下げる力になります。
バリュー投資家は、後者の状況を狙って、本質的価値よりも低い価格で取引されている不人気な有価証券を購入し、市場がその真の価値に気付くまで保有し続けます。市場の短期的な気まぐれに、理性的で客観的な分析に基づき、自信をもってアプローチすることにより、当社は、魅力ある投資機会を識別し、競争力のある長期の投資成果を提供することを目指しています。グレアムによれば、市場は「しばしば大きく誤る。そこで、時折、注意深く勇敢な投資家は、市場の明白な誤りのうちから利益を得ることができる」のであります。
自らが著した投資のガイドブック『The Intelligent Investor』で、ベンジャミン・グレアムは堅実な投資の秘密を3語で抽出することを試みています。その3語とは、「margin of safety (安全域)」です。これは何を意味するのでしょうか。
簡単にいえば、安全域 (margin of safety)とは、有価証券の価格とその本質的価値の差を表しています。バリュー投資家は、この安全域が大きければ大きいほど、投資は安全であると信じています。当社は、当社が見積もった本質的価値に比べてかなり低い価格で取引されている株式や債券を探し出して購入することにより、将来の不測の事態に適応でき、市場の下落局面にあっても弾力性のあるポートフォリオを構築することを目指しています。保有株の一部が障害に遭遇することは避けがたいのですが、状況が厳しくなった場合でも、安全域が保護してくれます。結果として、バリュー投資家は、すぐに消え去ってしまう可能性のある短期的な収益の追求よりも継続的な利益の蓄積に重点を置きます。それ故に、当社は、市場が私たちの購入した有価証券の真の価値を認識した際に、大きな収益が実現化することを期待します。
この手法は、しばしば長い時間を要することを承知しています。このため、私たちは、保有有価証券を忍耐強く長期的な視野にたって運用しています。通常の保有期間は、2年間から5年間です。
バリュー投資の本質はシンプルですが、価値とリスクの査定プロセスが複雑なため、この短いサマリーですべて説明することは不可能です。バリュー投資の原理と具体的な手順の両者についての理解を深めるには、チャールズ・ブランデス著『Value Investing Today第三版』(2003年、McGraw-Hill発行)をご参照ください。
当社の投資のプロフェッショナルは、バリュー投資の利点について確固たる信念を持っています。この信念は、シニアレベルの戦略決定から、従業員がお客様やファイナンシャルアドバイザーと交わす日々の会話に至るまで、私たちのビジネスすべてに浸透しています。
当社は常に、バリュー投資哲学を世界の市場のすべての市場条件に適用し、また運用するすべてのポートフォリオにも適用しています。当社は、投資の成功は、本質的価値よりも低い価格で取引されている有価証券を見つけて購入することによってもたらされると固く信じています。この手法の利点は、私たちの長期の実績に顕著に表れていると考えています。
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投資対象全体を絶えずスクリーニングすることにより、さらに詳しい調査が必要となる潜在的に評価が低い多数の会社が明らかになります。多くの場合は、直近の好ましくない情報によって株価が低迷した一時的に人気のない会社です。また、投資業界からほとんど無視されてきた活気のない産業に属している会社の場合もあります。
これらの事業をそれぞれ幅広く理解するためには、公表された財務諸表から直接の企業訪問までさまざまな情報源を利用します。忘れてならないのは、私たちの目標は、真の企業の価値よりも著しく低い価格で売られていると思われる株式を発見して購入することにあるということです。このため、当社のアナリストは各社の本質的価値について、初期評価を行います。その後、アナリストは、当社の投資委員会に対し、正式に最も魅力的な投資機会について提案を行います。投資委員会は、シニア・マネージャーやその他の経験を積んだ投資のプロフェッショナルなどによって構成されています。典型的なミーティングでは、ある会社の担当アナリストが、全体的な評価レポートを提出し、委員会のメンバーからの質問に答えます。委員会のメンバーはその後、その事業の価値について合意に達するまで議論を重ね、その価格でその株式をポートフォリオに加えるかどうかを検討します。
債券投資ポートフォリオの有価証券も、同じような手法で購入されます。有価証券分析や信用分析に注目して、数千の債券を評価します。債券投資委員会は、個別の債券の長所について評価し、本質的価値、安全域、および購入対象を評価します。株式および債券投資のポートフォリオでは、セクターや国のウェイトは、トップダウンの予測ではなく、選択した個別の有価証券に基づき決定されます。